ライフストーリー研究会2月例会の内容について報告いたします。

精神保健医療福祉の変遷を経験した看護師の人権意識の軌跡

報告:金澤 恭子

日時:2019 年 2 月 23 日(土)15:00~17:30
場所:立教大学 池袋校舎
キーワード:人権意識、精神科看護師、歴史的変遷、ライフストーリー

1.報告内容

精神保健医療福祉の施策は「入院医療中心から地域生活中心」へと大きく変化し、精神科病院に勤務する看護師には、これまでのケアからの転換、新たな視点が必要とされている。
本研究は、精神保健医療福祉の変遷の中に身を置いた看護師の経験から、看護師の人権意識がどのように形成されてきたのかを明らかにし、今後の精神科看護のあり方を検討することである。
今回の報告では、精神保健医療福祉の変遷の中に身を置いた看護師 1 名の 2 回にわたるインタビューから、人権意識に着目した語りを抽出して記述した。解釈まで至っていない段
階での報告であり、ライフストーリーの描き方や解釈の仕方などについて検討させていただいた。

2.質疑応答

【用語の確認】
● 親密な関係とは
→言葉の使い方が問題のため、修正する。

● D 氏の仕事はどのような仕事なのか
→精神科の看護師であり、注射などの一般的な処置もあるが、主にはコミュニケーションが主となる仕事。

● コミュニケーションの特別な訓練はされているのか。
→特別な訓練はされていない。D 氏が学生時代の頃は精神看護学という学問として確立されていなかった時代である。精神障害者の捉えかたについても障害者として位置づけられていなかったと言うところもあり、経験的な学びが大きいと考える。

● 半開放病棟とは
→D 氏が実習した病院の半開放病棟はどういうものかは確認できていない。一般的には時間で区切って病棟の入り口のドアを開放している病棟のこと。

● 宇都宮病院事件とは
→精神病院で起きた看護師をはじめとする医療スタッフの暴行によって患者 2 名が死亡した事件。この事件により、暴行のほかにも、患者に外部との電話や面会を制限するなどの行為が明るみになった。日本の人権軽視の実情が世界中に知れ渡り世界から批判を受けた事件である。

● 2004 年の精神保健医療福祉の改革ビジョンで地域以降を今後 10 年で解消するとうたわれているが、今の現状は
→殆ど変化していない。

● 鉄格子という言葉は、普段使っている言葉なのか。どういう意味を持って使っているのか。
→D 氏の語りは、実習時代のことが多い。看護学生が実習に行くときは、精神科病院の特殊性として、鍵の管理だとか、鉄格子の中にいる人ということが、学びの中で印象付けられているところがある。実習時代の語りだから、「鉄格子」という言葉を使ったのではないか。昔の精神科病院の象徴は「鉄格子」であったため、D氏にとっては印象的だったのではないかと思う。

● 書いていくときに何気なく、鉄格子云々と書いてあるが、その背景を説明しないといけない。「半開放病棟」と使っている意味はどういうことなのか、どういう環境で成立しているのか説明がないと分らない。もっと広い人が読むための説明が必要。どういう病院なのかと言う説明をしないといけない。語った語り口の中にある、ある特有の言葉はそれをかみ砕いて提示しないと理解されない。
→言葉の説明をしっかりと記述していく必要性を感じた。

【先行研究について】
● 先行研究と今回の研究の違いについて教えて欲しい。
→先行研究をもう少ししっかりとレビューし、その視点の違いについて論文の中で説明出来るようにしていきたい。

【生活保護受給者のエピソードの記述・解釈の仕方について】
● 生活保護受給者のエピソードは、貰える人が貰えているのかなど、背景を抑えておいた方がいい。
● 生活保護の話(ずるいよねと言う話)を人権につないでいいのかどうか疑問。
● 人権を考えるときに、麻雀をやる余裕があったことがどういう風に人権と関わっているのかということと、生活保護でずるいやり方で利用している人たちがいるという批判が、その人の人権意識とどういうふうに関わっているんだろうという所の説明が必要なのではないか。
→看護師という役割として関わることが多くある中で、D 氏は役割としてというよりも、人として関わっているというところに D 氏の患者との向き合い方がでていると感じた。人として関わろうという所。
→長年経験し、多くの障害者と関わる中で、ある一例として生活保護の話をしてくれている。この下りは私のことを「人権を守れと言う人」とカテゴリ化したのではないかと感じられた。私に教えるよう話し方で語ってくれていた。
→生活保護の話を人権につないでいいかどうかは、再度読み込んで検討する。

【D氏の背景に関すること】
● 病院の外側の話(地域生活の話)はD氏はどのくらい語れるのか
● 地域移行して暮らしている人とどういう関係性を作れているのか
→D氏はほとんど病院の中で看護師として働いていた方。エピソードの中には地域で暮らす方の話も出てくるが、主には病院の内側での話が主であった。そういった D 氏の背景も記述して加えていきたい。

【地域移行の話】
● 病院の外側からの情報の入り方や、地域の病院との連携の話などは、看護師としての閉鎖から広げていった、役割というか、アイデンティティの延長としてあるのか。地域移行は、病院から退院した人の語りではなく、病院の中で看護師としてやってきた語りなのかと思った。「俺精神障害だから罪にならない」と重なる部分もある。地域移行では、「でなさい」と言われても何のコネクションもなかったら生きていくことも大変なわけで、そこの連続性があった方がいいと思う。病院の中の人から語っていくというのもありなのかなと、それとも看護師だから語れることなのかとも感じた。
→地域移行の過渡期に病院の中にいた看護師がどのように長期入院患者の退院支援に関わっていたのかという、病院の内側から見た地域移行の話である。その背景の記述を加える必要があると思った。また、連続性の部分では、過渡期の混乱を切り取って記載したことと、実際にどのような変化があったのか地域移行の変遷の説明が足りないことから伝わりにくい記述になってしまった。もう少し、他者にも伝わるような記述にしていきたいと思った。

【誤解を招く記述への指摘】
● D 氏の語りに危うい部分を感じた。「アイスを買ってあげる」とか、「映画を見させてあげる」という、権利を上から与えてあげている感じがすごくする。記述の仕方に注意が必要だと感じた。
● 生活保護受給者や精神障害者の犯罪率に関してもしっかりと抑えてからじゃないとこの語りを出したら大分危ない。むしろ精神障害者に対する偏見を持っている人たちにとってはほらみたことかと喜んで飛びつきそうな感じの事例なので、ここは注意して出さないと D 氏自身も望んでいない形で解釈をされて精神障害者ってこうだよねとなりかねない。分析とは離れた話になるかもしれないが、記述の仕方が難しいだろうという感想。
→ご指摘の通り、確かに誤解を招くような記述であると思った。D 氏が望んでいない解釈のされ方にならないような記述にしていきたい。

【ライフストーリーの書き方】
● D 氏の人権意識は一貫しているように感じたと簡単にまとめてあるが、ライフストーリー法で見ていくとするならば、人権意識が一貫していたというよりは、今から振り返った語りが一貫していただけの話かもしれない。実際にその当時どういう風に感じたかはまた別かもしれない。いまの人権感覚で振り返ったから当時のことを今のように語れるというふうに思うならば、そこでどんなふうに人権意識が変わってきたのかというのを分析するにはもう一工夫必要な感じがした。
→インタビューしていて感じたことは、今から振り返って語っている部分が多く、その時代に戻っていない。その時代に留まったその時の思いを引き出すことが難しかった。インタビューの仕方を再度検討していく。

● 麻雀したという所で、具体的に「麻雀した」と言うことだし、彼らが「すぐ帰っておいでね」というのはそのまま受け止めていい。思いとか考え方とは別にこういう事実としてあったという語りである。これはある種の過去の構成を持っている部分であり、それを踏まえた上で考え方は今の現在からの考え方から捉えているという風にも言える。そこは少し、過去をそのまま捉えるときのヒントにはなる。具体的なアクションの説明があったら、それはしっかり記述しながら、「その時こうだったのか」、「今はこう考えているけど」という風にひとつ捉え直すことは可能である。
● 語られたことに関して解釈するときは、距離をおいて「本当にこうなんだろうか」と言う捉え方をしておいた方がいい。今後解釈を丁寧にやっていくときに必要な作業になる。
● 現代思想の対談の中で、「語り手の方は語りをその人が語りたいように都合よく話す。リアリティとして受け取るときにその把握をこちらもいくつかのクッションが必要」と書いてあった。対話しながら聞くときに、例えば今のような所であれば、どのようなクッションがあるのか。具体的に聞き手としてどういう風に語っていくと、いいのか確認したい。
● 例えば、人権という問題を麻雀と、生活保護の難しさの関連で一種矛盾するような構図をどう捉えていくのか、単に人権で言っていいのかと言うことがある。生活保護のずるがしこさを一方的に言っているが、その背景に「こういうことがあるんだよね」という背景が見えてきたら、ある種ずるがしこさの中にある、単に、人権とか、生活保護と言う制度とは違う形で、この人たちはこういうことをやっていると言うことが見えてくる。そこが見えてくると、ある程度人権という幅の中に、そういう「生活保護―ずる賢い」という、単なるそういう構図ではなく、この人が人権をどういう意味で押さえているのか、制度的に人権と言っているけど、もっとこの幅のなかで、捉えるべきなんだと言っているのかが見えてくる。つまり、そう言う幅の中で見ていけば、解釈する側が、ある程度一貫した読み方ができる。言葉の通りに受けてしまうと、ただ非難しているだけで終わってしまう。そこをどういう風に別の語り方の中から、もう少し読み取れるという所を、解釈する側が読み込む必要がある。それを一方的に非難して、堅い人権のままにしておくのか、もっと、ソフトな人権意識としてこの人の人権を捉えるのかという事はあると思う。看護師により人権の幅はあると思う。そこを読み込まないと、人権意識がはっきりしてこない。単に制度が変わったからこの人が変わったんだと言うだけでは、インタビューは意味を持たない。この人の人権意識はいったい何なのかという捉え方をしないといけない。その人権を研究者なりの読み込み方で捉えないといけない。つまり人権以外の言葉で捉えられるものがもしかしたら、ここにあるのかもしれない。制度そのままで見ていると、せっかくの聞き取りが意味を持たなくなってくる。
→D氏が人権をどう意味で押さえているのか、D氏の人権の幅はどうなのかを、別の語りから読み込んでいきたいと思った。

● D 氏は良くしゃべる人。リッチなデータはあるが、気持ちや思いが出てこない。ある意味ずるがしこい生保の下りのところで再構成している。過去を語っているんだと思う。気になるのが、「何々してあげる」という言い方。D氏は、いつも弱者に対して「○○してあげる」と言うように感じる。弱者には、暖かくできるが、こと、ふてぶてしい人など色々な人が出てきたときに、「○○してあげる」と言うところから、その位置づけが変わり、何かそこに批判的になっているのではないかと思った。ある意味D氏の対等性の現れともいえる。また、D氏は、反旗を翻すと言うよりは、その都度それを受け入れるという姿勢が見える。それは 2 人目のインタビューの方にも同じような傾向がみられた。シンプルで受け入れられるような人がそのまま勤務を続けていくのかという風にも感じられた。

● 以前、2 時間話しっぱなしのインタビューを経験した。その時の方法としては、まず、話していることをそのまま受ける。2 番目に、語りの濃淡の部分を見直した。そこの濃淡の部分には、自分を美化したり、錯誤などがあるので、そこをどうやって客観的にするかどうかをみた。そこから、制度上や社会的な変遷を照らし合わせるとこのように解釈できるという 3 重構造をとった。だから同じような方法をとればいいのではないかと思った。もう一つは、1984 年事件、同じような話を聞かせてくれる別の人がいたら、客観性を取るために、リタイヤする直前の人に聞くのもいいし、宇都宮病院事件以降の事件に集中してまとめていくと、呉秀三の研究など、その辺とつなげて、大きなスパンで歴史を語ることができるその可能性を秘めていると思った。

● サマリー的に歴史が書いてあるが、そうではなくて、聞いたことがあって、その後に歴史の背景にすると、後ろの解釈が頭に入りやすいと思った。
→事実情報や歴史的背景の挿入の仕方を考え、語りと関連づけた説明を加えながら記述していきたい。

【インタビューの聞き方】
● 実際に制度がどれくらい看護師に影響したのかが気になる。語りが D 氏の経験を聞いていく中ででてきたものなのか、それとも、D 氏の経験プラス制度との関わりの中で質問しているのか、どっちか。
→インタビューは D 氏の看護経験で印象に残るエピソードを教えてくださいと言う形で聞いている。制度と絡めては聞いていないので、殆ど制度の事がでなかった。

● 歴史的変化についての聞き方が気になるところ。
● たとえば、「その当時こんな事件がありましたね」と言う聴きかたは一切していないのか。
→研究協力者には、事前に、研究計画書と歴史的変化を思い出せるような年表を送付した。インタビュー時には誘導してしまうのではと考え、具体的な聞き方はしていない。
→2 回目インタビューは、聞き漏らした点や、内容の確認したい点などを聞いた。

● 書き方も制度の変遷が書かれて、語りがでているが、これをリンクする形の説明がされていないため、その辺の質問がでる。
● 聞き方、振り方があったのではないか。
→プレインタビューでは、制度に絡ませた聞き方(時代を区切って、制度の主な趣旨や事件を思い出せるように)で行ったが、看護師の特徴なのか、あまり制度を意識していないため、逆に語れなくなってしまった。そのため、印象に残るエピソードを語ってもらい、その語りから制度と関連付けていこうと考え、このようなインタビューになった。

● 語られなかったと言うこと自体が、看護師特有なのか、D 氏特有なのか。聞いたのにもかかわらずその反応がなかったと言うことが重要な情報となる。その人が自分を語るときの、語られなかったこともデータとなり、関心がなかったこともデータになる。もう少し欲を出して聞いてみる必要がある。
→3 回目にインタビューを行うときは、制度と絡めた聞き方、引き出し方を工夫する。また、その反応から、語られたこと、語られなかったことの意味を解釈していきたい。

● 少なくとも一方的に話して、口を挟めない状況である。半構造化インタビューと言っているが、実際にはそうなってない。10 人に聞くから半構造化という。1 人や 2 人に聞くときは、単に自分のメモであり、半構造化ではない。

【調査協力者について】
● 変遷を経験した看護師の該当者はどのくらいいるのか
→計画時は、精神衛生法の時代を少しでも知っている精神科看護経験 30 年以上の人と設定した。そうすると、定年間近の方々であり、該当者はそれほど多くはない。

● 急性期(3 ヶ月で退院を目指す病棟)で働いている看護師と、慢性期(長期の入院の方がいる病棟)で働いている看護師では違うのではないか。働いている環境や、地域性でも変わってくるのではないか。次のインタビューの方はどういう所で設定されているのか。
→すでに 2 人目のインタビューは実施している。2 人目の方も関東近郊の民間病院で働かれている方である。D氏と同じように制度に絡めた話はほとんど出ていない。

【テーマの設定について】
● 人権という言葉より、もっと看護師になるというところと、現在の話の連続性のほうが強い気がする。
● 考察メモに共感した。最初、D 氏は素直でシンプルな方という印象を持った。自分の感覚を大事にして看護されてきたという印象。26 年働いて、制度、法律も変わってきているけど、そう言う意識は語られない。それよりも自分の感覚を素直に語っている。自身の個人的価値観の中で生きているように感じられた。変遷の中にいても自分の軸が非常に固まっている。別の看護師に聞いたら、制度を受けているかもしれないが、変遷のなかでも、このD氏にとってはぶれていない。シンプルに人として善か悪かを捉えていると感じた。
● そう考えると、今日の報告のタイトルはおかしくないか。むしろ長年経験した人の人権意識、人間観、価値観、そういうようなものであればいいけど、制度の変化に惑わされないで看護師をやってきたこの人の看護観はいったい何なのかというのは新しい問いとしてある訳だが、今の話だと、このタイトルはおかしい。D 氏にはこのタイトルは不適切。
● 変遷が良く出てくる、看護師の軌跡が出てくる。この研究における軌跡と言うことについて教えて欲しい。
→人権意識の軌跡とは、人権意識は長い時間をかけて多様に変化するものとし、先人たちがその時々の人権意識をもとに患者に寄り添っていた経験の様相とした。

● 様相というのはどう表現するのか。様相と言われるといっぱいイメージしてしまう。一貫性を持たせないといけない。経験の様相が具体化されるともう少し読みやすくなるのではないかと思う。変遷というと混ざる、タイトルが軌跡となっているが、目的の所では変遷と言う言葉が多用されている。
● ライフストーリーの価値観を見ようとすると一貫していたと言っている。そうすると変遷とか、軌跡とか言う言葉と矛盾してくる。軌跡とか、変遷を説明しているのは、注釈で書いている変化の部分で分るわけであって、ライフストーリーからは分らない。ライフストーリーを使うのであれば、そこの経験から読み取るのが大事で、そこで、彼女が一貫して若いころから、こういう人間観をもって接してきたんだと、だからこそ、部長にまでなれてるんだという風にいうんだったら、タイトルを変えた方がいい。辛い病棟で、こんなに変遷してきた精神科の中で、ここまでやれてきた看護部長ってすごいじゃないのってもし言うとしたらその人たちがどんな人間観として彼らと接してきたのかっていう捉え方で、考えたっておかしくない、むしろその方がいいかもしれない。語りそのものを活かしながら、人権意識ってこうだったんだというものが見えてくる。制度と照らし合わせるとどんなふうにずれていたり、幅を持っていたりするかって言うことの議論になる。どっちかというとそう言う論文にした方がいいのではないか。2 人のライフストーリーをしっかり出していくことの方がよっぽど価値がある。
→確かにご指摘の通りである。語りとテーマが一致しないところを無理に結びつけようとしていたのだと思う。テーマについては再度検討する。

【構成について】
● D 氏のデータは時系列ですか
→時間軸で再構成し、その後、話の内容でカテゴリ化した。カテゴリ化により、時間軸が前後する部分や時期が重なっている部分がある。カテゴリ化せずに時間軸で構成したほうがいいのかもしれないため、再度検討する。

【調査者と語り手の関係性】
● D 氏との関係について
→D 氏とはインタビュー時が初対面であり、調査者より地位が上の看護師である。

● 教師が教え子に教えるような印象もあって、肯定的な話が多く、調査者を自分の同じ業界の低い地位の人と思っているのではないか。
● 人権が制限されている人に関わる専門職。D氏の語られ方は、教員に似ていると思った。
→D氏は看護師として勤務しながら、看護学校に教えに行ったり、看護師教育に携わっていた時期がある。確かに話を聞いていて、学生への語り口で私に説明してくれているような印象があった。

● 調査者と語り手の関わりについても記述があるといいと思う。
● もう一方別のいみで、調査のプロセスの中に、D氏が饒舌にしゃべり質問を繰り広げることが出来なかったと、調査過程を書いてもいい。
● データの中にもそのプロセスが出てこないといけない。工夫が必要。
→調査者と語り手の関係性や、調査プロセスについても記述していく。

【語り手と患者の関係性】
● いわゆる患者さんとの関係も教師と生徒の関係になっていたのではないか。
● 「○○してあげる」という感じは、悪気はなく、その人のためという所があるのでは
→患者に対してパターナリズムみたいなものは、多少感じられが、教師・生徒のような関係性は感じられなかった。語り手と患者の関係性についても再度見直してみたい。

【人権について研究する動機】
● なぜ看護師が人権に対して研究しないといけないのか。普段生活していても人権に関して研究しようと思わない。
→私自身、精神科に 20 年勤務していて悩むことも多い。精神科医療は強制入院や身体拘束など、患者の自由を制限する医療が行われている場である。人権の制限に関わるような場面が日常的にある。法律に基づいて行われているが、それ以外にも、病院内のルールや患者の安全を守るためという理由でかなりのことが制限されている環境がある。このような中、看護師としてどのように患者の人権を考えていったらいいか分からなくなるような場面が多々ある。一方で、法律が変わってきた中でも人権のとらえ方が変化してきている。「精神障害者」の捉え方も変化している。このような背景のなかで、時代の変遷を経験した看護師がどんな風に変化してきたのか、どうやって働き続けているのかと言うことに疑問を感じた。

● 看護師が措置入院など決めるわけではないにもかかわらず、なぜ看護師が一番人権について考えなければいけないのか
→人権を考えなければいけないのは看護師だけではない。しかし、実際医師が判断して指示したものを看護師が直接患者に提供するという点では、最前線のにいるので、葛藤が生じやすい。さらに精神科医療は、身体的なものと比べて画像やデータで示すことが出来ない。診断基準を使って診断しているが、医師それぞれの判断に頼る面も多く、そのあたりは曖昧性の中でやっているところがある。そのため、葛藤も生まれやすい現場であると思っている。