LS研究会レポート(2019年9月)1945年マニラ戦スペイン総領事館襲撃事件を生きのびて

「1945年マニラ戦スペイン総領事館襲撃事件を生きのびて―”記憶をなくした”6歳スペイン少女のライフストーリー」

報告:荒沢千賀子

日時:2019年9月20日(金)
場所:立教大学

今回の報告における報告者自身の課題:
1)研究のねらい
歴史研究に軸足を置いてライフストーリーを描きたいとの報告者自身のねらいはどこに違いを見ているからか、

2)実践現場の知見とライフストーリー
実践現場の視野によってライフストーリーの貢献可能性が明瞭に見えると言えるか、

3)研究者の内的「対話(語り手と=研究者の 気づきと変化、あるいは読み手と)」:
どのように研究の俎上にあげることができるか、

4)諸研究分野の論点:
学際的に知見を参照する研究では諸分野の各論点に関する有益な議論はどのように可能か、

研究会では、報告者の課題の1と4に関して多くの気づきがありました。

<研究のねらい(上記1)と各分野の論点(上記4)について>
コメント1:ナラティブ論・物語論をどうとらえるのか。戦争の記憶分析での「語りえないもの」や「語りえなさ」へのアプロ ーチにははずせないと思うが。
←「記憶をうしなった」との語りが本ケースの出発点で、記憶分析がねらいではない。(下記の<考察1>を参照)

コメント2:六つの各章立ては、「歴史実践」の観点からとらえた対象者のライフの段階に基づくのか。
←その通りである。ただし、下記の<考察1>の議論を参照してほしい。

コメント3:多くの論点が盛りこまれそれぞれ興味深いものの、ひとつの論文に入れ込めるのか。独立した論点として出さず、 ライフストーリーを追う背景に入れるのか。
←レジュメに記した内容は「はじめに」に入れる。および、以下の<考察2>を参照。

コメント4:医療の専門からすると、トラウマやPTSD の用語が整理されず使用されている。
←報告者の定義ではなく、引用用語である旨の明示が必要であった。以下の<考察2>を参照。

コメント5:「主観は鍛えられる(濱谷教授:当時)」の用語はどのようなコンテキストで出されたものか。
←概念そのものに意味を見いだしたのではなく着想が広がるきっかけ。以下の<考察3>を参照。

コメント6:レジリエンス概念について。
←レジリエンス概念の深化が研究のねらいではない。以下の<考察2>を参照。

<考察1>報告者の課題1について
発表では「歴史実践に焦点をおいたライフストーリー」「人生のあゆみ全体を、歴史実践ととらえてライフストーリーをえがく」と「歴史実践」を前面に掲げました。しかし、本発表で気づいたのは、論点をはじめに示して それを「演繹的」に論じたいのではないということです。むしろ対象者自身が述べた「自分らしさ」をキーワードとして、“対象者が「自分らしさ」をとりもどし活き活きとあゆんでいくプロセスをライフストーリーとしてえがき、その意味 を考える”ことを論文のねらいとし、この叙述のあとに“このあり方全体が「歴史実践」といえる”との研究者の認識を示す方が、研究のねらいに合致していると考えるに至りました。

<考察2>報告者の課題4について
諸分野の各論点を深めることが研究のねらいではありません。その旨明確に記していなかったことと、論文における研究のねらいとの関係での視点の限定が弱かったことから、多くの質問をいただいてしまいました。諸分野の各知見については、何を補うために参照しているのか明示して有益な議論につなげたいと考えました。

<その他のご意見・ご質問>
・プレゼンでの発表内容は活き活きとしていたが、論文ではどれほど文字化するのか。
・2015年ライフストーリー原稿は、まだ筋書きでリアリティが不足しているので、もっと書き込んでほしい。
←反応が確認できる場での発表とはちがい、誤解訂正不可能な論文では限りがあり、2015年拙稿が基本。
・リアリティをどう確保するのか。
←他の語りや資料を補い、研究者「わたし」の見解を記して読者を対話へ誘う。
・指導教授の見解。
←スタイルは修士論文からのもので、テーマや視点もふくめこの方向で進むようにとの見解。
・関係がかわっていく変化がとらえた言葉のやりとりを読みたい。
・外国語の語り手では「語り」の翻訳を経るので、ニュアンス伝達に、自分はいつも不安がある。
←上記不安を共有するので、「語りのおもしろさ」がどこまで追求できるか不明。研究者の観察を交えて描く。
・教育現場での反応では、年齢その他の要素で異なるのではないか。
←年齢や学力等より個人差が大きく思われる。

貴重な ご意見と暖かい励ましをいただきありがとうございました。参加者の皆さまに心よりお礼申し上げます。

(作成:荒沢千賀子、web版編集:JLSR研究所)

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