中野卓調査資料目録(能登)について

社会学者、中野卓(1920-2014)は、満80歳になるまでの自身の研究歴を次の13節の順で語っている。

1.戦時下、商家同族研究の開始
2.戦後、最初の研究報告
3.「二条組」同業街のインテンシブな調査への転換
4.零細な工業経営体の調査
5.漁村社会の調査
6.個人生活史の重視
7.府中市史近代篇の調査
8.水島工業地帯公害問題緊急調査と一老婆のライフ・ヒストリー
9.トカラの老人とハワイ日系一世女性のオーラル・ライフ・ヒストリー
10.パーソナル・ドキュメントとしての日記
11.同じく研究者自身の自分史、および論文集の編纂
12.定年退職後の調査と著作
13.最近の著作(「私の研究生活史」2001)

中野の能登調査に該当する時期は、4.零細な工業経営体の調査 5.漁村社会の調査  6.個人生活史の重視 である。6.個人生活史の重視 では、「このころまでの私の研究は、個々の家と同族団の歴史をキーコンセプトとして社会構造とその変化を分析するのが特徴でした。」と述べ、同時に、しかし、5.漁村社会の調査 の能登での調査地で、その長期調査の中で、二人の人物のライフ・ヒストリーをとりあげていることを強調している。ここに、日本の社会学界でライフヒストリー研究再興の契機ともなった中野卓編著『口述の生活史』(1977)以前の研究姿勢、状況を伺うことができる。

本目録に収録した調査資料とは、中野が参加した1950年代の九学会連合の「能登調査」と、その後、中野個人によって継続された「長期調査」に関わる調査資料である。資料には、おそらく調査時に中野がつけたであろう調査日誌やフィールドノートに類するものは残念ながら含まれていなかった。しかしながら、中野の能登調査の実態は本目録の内容からでも十分うかがえるものと思える。
本目録では、資料内容と中野の能登調査の概要を知れるように、「凡例」において、いくつかの関連事項についての解説を施してある。(中西茂行)

【資料一覧 目次】

能登調査資料 凡例

能登調査資料 一覧